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朔月の島から星の丘へ。 [*擬人化小説*]

本軸の弌吏のお話。
朔月の島から星の丘へ引っ越しました。
実際にリヴ弌吏がどこかへ行ったとか云うわけではないです。
リヴはちゃんと朔月の島に滞在してます。
擬人化設定としては朔月の島は離れました。
 
リヴ公式のアイテムやそれに準ずるデザインを参照しています。
ミニリヴなどは公式に正式な設定があったとしても自分設定になっちゃってます。
今回の例としては星降る砂漠や風に舞う星砂などをイメージしています。
ネコウモリもがっつり自分設定で使っちゃってます。
基本的に本軸の世界は既存の島やアイテムの影響を受けている(*0∀0)イヒ。
こんなイメージでっていうことで最後にスクショも貼り付けてあるので重いかも。
 
 
  
 
 
【 泡沫の星月夜 】
 
 
夜色の砂が風でさらさらと流れて日々形状を変えていく星の丘。
星の砂丘・星の砂漠・星の大地、名称は様々あるが、所々の砂が丘状に盛り上がっているという意味では"星の砂丘"が一番しっくりとくるだろうか。
ただ、人に場所を伝える時は"星の丘"と言うことが多い。
名称など正確には決まっておらず、皆好きに呼んでいるのだ。
 
現在この地は泡沫の島の一部に存在している。
もちろん外部にも同じような場所は存在しているだろう。
泡沫の島は強く望めば、その願いが深ければ深いほど、理想の地へと近付く。
星の丘は常に夜の世界で、空には月と星、地には夜色の砂がキラキラと輝き、砂を手に取ると砂時計の砂のように指の隙間からサラサラと流れ落ちていく。
見渡せば夜空と夜色の砂が一体化したような幻想的な世界が広がり、心を穏やかにさせる。
…だが、彼にはそんな世界を見る"光"が存在しない。
朔月の島にいた盲目のクロメ、弌吏は最近この地に居住を移した。
色を見ることも、景色を眺めることもできないが、月と星の淡い光と風を体で感じ、砂の触感を楽しんでいる。

この地には不思議な生物も棲み付いている。
丸っこいカタチに小さな蝙蝠の羽のようなものがついていて、さらには猫の耳のようなものもついている。
どうやらネコウモリという生物らしい。橙夢が教えてくれた。
この生物は不思議なもので、弌吏が一人ぼんやりと過ごしていると気付くと周りにわらわらと5、6匹は集まってくるのだ。
多い時は10匹ほどに囲まれている時もあるという。
しかし、弌吏に会いに橙夢や陸桜がやってくるとささっと姿を隠してしまう。
橙夢が言うには、一緒にいる間は遠くの方でこちらをじーっと眺めているのだと。
まぁるい金色の輝く目で、じーっと…
わけのわからない生物だが、害はないので好きにさせている。

「また寄ってきたのか。」

この日も砂丘で月光浴をしていた弌吏の周りにネコウモリたちが集まってきた。
砂地に腰を下ろし、両手は尻の後方へとついて空を仰ぎ見る体勢でしばらくいると、指先にもぞもぞと柔らかなものが触れる。
まるで食んでいるような、そんな感触。
すぐ横で身体を擦りつけてくるもの、ぴょんと飛び跳ねて伸ばした脚の上に乗ってくるもの、手指を食むもの…色々だ。
食むと言っても、噛み砕いたりする歯もなければそれほど強い力でもない。唇で甘噛みされているような、その程度。
弌吏の髪は長いので、砂地についてしまっている髪の上にもネコウモリがもぞもぞとし始める。
ぐいっと引っ張られるため、仕方なしに長い髪を前方へ持ってきて緩く結うことが増えた。
初めて弌吏がこの生物と触れた時に、もしかしたら捕食しようとしているのではと思った。
そして、そのまま食われてこの砂地と骨が一体化するのもいいだろうと…そう、思った。
だが一向にそうなる気配もなく、なんの害もない不思議な生物ということで彼の中ではインプットされ今に至る。
この生物の名を知っていた橙夢も、害はない程度しか情報を持っていなかった。

「お前たちはいったい何者なのだ。」

少しはみ出るが両手の平で納まるほどの大きさのネコウモリ。
中にはまだ幼子なのか、片手の平で納まるものもいる。
弌吏は周囲に集まるうちの一匹をその両手の平に掬い上げ顔の前まで持ってきて問い掛けるが、答えが返ってくるはずもなく独り言。
弌吏の鼓動に伴ない揺れる手の平の中で、ネコウモリもぽよんと揺れる。
触り心地も不思議なもので、柔らかいが弾力のある…なんとも言えない感じだ。
しばらくして、弌吏の周囲で身を寄せ合っていたネコウモリたちが一斉に離れていった。
来訪者だ。弌吏自身も、気配でそれを察知する。

「いーちり。」
「橙夢か、どうした。」
「どうもしないよ、会いに来ただけ。」

特に用があるわけでもないが、用がなければ来てはいけないわけでもない。
橙夢は弌吏の左隣に腰を下ろし、先ほどまでいたネコウモリ同様にぴとりと身を寄せた。

「ねー、本当にもうずっとずっとずーっと、ここで暮らすの?」
「ン…」

左腕に体温と重みを受けながら、橙夢の言葉に眉尻を下げて苦笑を零す。
弌吏にとっては"暮らす"という感覚ではなく、生活感と云うものはないに等しい。
朔月の島を離れてまだ数日程度だが、すでに馴染み始めてはいる。もう彼が朔月の島に戻ることはないだろう。
だが、橙夢は帰ってきてほしかった。陸桜も同様である。

「…橙夢、あの島には………もう戻らん。」

戻ってきてほしいと思ってくれるのは、嬉しい。
だが、躊躇いを見せつつも弌吏はもう戻らないと、そう決めた心を口にする。
普段の元気のない橙夢の頭を、諭すように優しく右の手で軽く撫ぜた。

「…もう帰りなさい。」
「やーだ。」
「橙夢…」

珍しく我儘を言う。
普段素直な子なだけに、今回ばかりは橙夢の気持ちが弌吏には重かった。
困ったなと小さく一息吐き、沈黙する。
だが、その沈黙も束の間。
一転して橙夢が腕を離れてパッと立ち上がり、お尻についた砂を手で軽く払い始めた。

「…橙夢?」
「ごめんね、困らせちゃった。」
「いや…」
「帰るね!…また、来てもいい?」
「…あぁ。」

…橙夢も、先ほどの弌吏の一息と沈黙が重かった。
恐らくハッとしたのだろう。駄目なことをしている、と。
本来、泡沫の主は住人の行動に感化してはいけないという暗黙のルールがある。
誰が決めたわけでもないが、ここがそういう領域であるということを泡沫の主は守らねばならない。
とはいえ橙夢はわりと自由に住人たちと関わっているわけだが、さすがに今回の移住については、橙夢は口を挟んではいけない。
まだ主としては力不足な橙夢で白鴉に役目のほとんどを任せっきりでも、自然と泡沫の島の制約はその心に沁み付いていく。

バイバイまたね!と明るい声で橙夢はその場を立ち去って行った。
視界が閉ざされているため音などの変化に敏感な弌吏には、その声音が空元気であるということが手に取るようにわかる。
本音を言えば、誰とももう会いたくはなかった。
昔の自分であれば冷たく突き放していたであろうと、静けさの戻った星の丘で一人苦笑を零す。
さらには、島を出て泡沫の住人をやめるという選択肢もあったが、それをしなかった自分の心の変化に戸惑いもしている。

(存外、私はここが気に入っているようだ。)

泡沫の島が。そして橙夢たちのことも。
生きてきた年月を考えればこの地にいるのはほんの僅か。
すぐに立ち去ろうと思っていたのに、気付けば居心地が良いとさえ思っている。

「…お前たちは、本当に不可思議な生き物だな…私に懐くなど。」

橙夢が立ち去った後の星の丘、再びネコウモリたちが弌吏を囲う。
いったい何がしたいのか。どういった生物なのか…、今はそんなこと、どうでもいい。
星空を仰ぐように寝転ぶと、思考を止めるために眠りに入る。
これまで穏やかに眠れることのなかった弌吏が、この地に来てからはすぅっと安らかな眠りに入ることができるようになった。
弌吏の寝息を聞こえてくるとネコウモリ達もウトウトとし始めて、身を寄せ合うように眠る。

泡沫の片隅。
夜色の砂と星月夜…そして、不可思議な生物たち。
のんびりと、この地の一部と化していこう………―――。


【 END 】
 
 
 
* * * * *
 
元々弌吏は「終焉の地」を求めて放浪していた人なので、
その途中で足の怪我で動けなくなっているところを橙夢に拾われて泡沫の住人に。
怪我がよくなったら出ていくつもりだったものの、思った以上に長居してしまい、今に至る。
そして最終的に下した決断が、「泡沫の世界で終焉を迎える」ことだった。
(過去の怪我の後遺症の悪化によりもはや放浪に出れるほどの身体の状態ではなく、泡沫の地に留まる決意をした。)
泡沫の島(領域)は住人が強く望めばそれが叶う。星の丘は弌吏が望んだ。
(ただし島の意思により拒否されることもある。今回は望みを島が受け入れた。)
でも橙夢は納得していない。ずっと一緒に居たい。(島守としてではなく橙夢自身の自我による、我儘。)
納得はしていないけど…島が受け入れた望みと、住人自身が決めたことであるならば本来は黙って見守らねばならない。
…が、橙夢は橙流のような熟練した島守でもなく心の成長も未熟のため、うじうじ。
(こういうことを乗り越えて橙夢も島守として成長していく。)

補足が長くなったので、また自己欲求の発散のために別記事で補足します。爆
  
 
* * * * *
 
 
星の丘。こんなとこ(イメージ)
空の色(背景)は青い月とかの方が近いかも。
星の丘。

暗い森。星の丘に存在する暗い森。
ネコウモリ以外の生物もいる。じめっとしている。
暗い森。

星の泉。暗い森の中心に存在している泉。
ここで沐浴したりする。ネコウモリはどこにでもいる。
星の泉。

良かったら遊びに来てくだs げふん。
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時空

SNSが終了してしまうそうなので
(すみませんお知らせは自分で確認していません)、
このお話の続きで書いてた部分をこちらに付け足し。

*-*-* *-*-* *-*-*

…だからこそ、この地を選んだのだろう。

(此処が…最期の、地だ。)

もう、何処へも行かない。いや、正確にば行けない゙のかも知れない。
橙夢の去った後、再びネコウモリたちが弌吏を囲い始めた。
隠してはいるが、時折内蔵(なか)が痛む。
昔、オオカマキリに襲われた時に負った裂傷。深く、深く、内蔵をも傷付けた。
瀕死のところを救われたが、2年ほどケアを受けて姿を消した後は何もしていない。
今現在、内蔵(なか)がどうなっているのか…恐らく遥弐にならケアができるだろう。遥弐自身も再会した当初から診せろとしつこく言っていたが、拒否をした。
長年後遺症に苦しんではきたが、今度ばかりは駄目になってきていると自覚している。もうこの身体では、旅はできないだろう、と。

痛む。軋むように。
苦しい。締め付けられるように。
砂地に倒れ込むように、背を丸くした。
嫌な汗が流れ、荒くなる呼吸に意識も遠退く中…脳裏には昔瀕死の弌吏を世話してくれた親父さんの顔が浮かぶ。
もうすぐ…もうすぐ…


………―――。

_
by 時空 (2014-03-23 23:28) 

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