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橙流と赤蜘蛛の話。 [*擬人化小説*]

6月です。梅雨です。
しかも6月もすでに1週間が過ぎてます。梅雨です。
カエルイベント、去年は参加しなかったんですが、
今年は頑張って集めてます。キリがありません。梅雨です。
黒いカエルがなかなか顔を出してくれません。梅雨でs(
 
今回は以前のブログで上げてた橙流と赤蜘蛛の出会いのお話を。
本軸でのお話です。
新たにブログを始めた当初は本軸にはあまり触れないと決めていたんですが、
気付けば本軸関連が増えてきたので、もう気の向くままに本軸とサブ軸を
切り替えていけばいいか☆と思ってます。
サブ軸もじわじわネタが(脳内で)増えてきたのでそろそろカタチにしたい(しろ)
陸桜と弌吏がわりと危うい感じ(主に陸桜)だったり、
陸桜と橙夢がわりと危うい感じ(主に陸桜)だったり、
陸桜がだいぶ自由人になってきましたサブ軸です。爆
 
というわけで(?)
今回は本軸での橙流と赤蜘蛛の出会いのお話。
 
 
 
 
 
 
※赤蜘蛛は基本原型。ちゃんとヒト化もする。




【 赤い蜘蛛 】


緑の多い島の片隅、橙流は普段通りに薪用の枝を拾いに林にやってきた。
折ったりはしない。何らかの事象で地に落ちた手頃な枝を拾い集める。
少し冷気を帯びた風が吹き抜ける中、ふと異臭を感じた。
血のような生臭さ。腐臭が混じっている。
くんくんと鼻を効かせながら、橙流はその臭いの方へと向かう。
がさっと茂みを分けると眼に付いたのは長く細い縞々模様の足。
それも一本じゃない、数本。
すぐにそれが、モンスター…女郎蜘蛛の足だと気付いた。


「あら。」


気付いたところで焦りはしない。
ガチ、ガチ、と異形の口を鳴らし警戒心を見せる蜘蛛だが、とても弱っている。
橙流はすぐにその異臭の原因がわかった。


「足、腐ってるじゃない。」


左右合わせて8本ある蜘蛛の足。
左後ろ足の、下から2番目の足が千切れて体液が滴り落ちていた。
じくじくと異臭を放つところをみると、しばらくそのまま放置して動いていたのだろう。
恐らくそこから菌が入り全身に影響が出ていて弱っているのだ。
良く見れば身体にも火傷を負っているのがわかる。火でも当てられたのか。
シュー…と弱々しい息遣いながらも橙流の存在を警戒する蜘蛛だが、
こんな状態では力尽きるのも時間の問題。


「じっとしてなさい…と言っても、その様子じゃ動きたくても動けないわね。」


"/sleep"

自分の身体よりも遥かに大きい、赤い蜘蛛。
手の平で覆い切れないその頭にそっと手をおいて、橙流は"眠りなさい"と優しく囁いた。



  ***



赤蜘蛛がぼんやりと眼を覚ました。
よく覚えてはいないが、突然女が現れて話しかけられた気がする。
胴に圧し掛かる重み。複眼で重みの方へと視線を向けると、女が自分の身体に凭れかかって寝ていた。
なんて怖いもの知らずな女なのか、そう赤蜘蛛は思いながら今度は千切れた足へと視線を移した。
そこには真っ白な包帯が可愛らしく蝶々結びにされているではないか。
地を見れば汚れた包帯。何度も何度も清潔な包帯を巻き直してくれたのだろう。



もそり。
身体を動かすと橙流もふっと眼を覚ました。


「あら…眼が覚めたのね。具合はいかが?」


顔色などはわからないが、見つけた時よりは幾分具合が良さそうだ。
だがまだ身体には熱が篭っている。


「そうだ。ねぇ、赤蜘蛛さんって何を食べるの?」


体力付けないと回復しないわよ、と橙流は普通に赤蜘蛛に話し掛ける。


「普通に考えたらやっぱりお肉なのかしら…私も食料になる?でもさすがにそれは無理ねー。」


一人で、よく喋る。
その場から動こうとしない赤蜘蛛に少し待っててと言い、橙流はいずこかへといそいそと行ってしまった。

ぐるりとその場を見回して気付いたことがある。
ここは、これまで身を潜めていた茂みではない…
近くに小さな家らしきものが見える。恐らく橙流の居住空間だろう。
さすがにこの巨体では家の中まで入れることはできなかったらしく、
木の枝が伸び葉が生い茂る自然の屋根の下に赤蜘蛛はいた。
身体の下には柔らかな草が自生しており、心地が良い。
…家の中に入れなかったことはともかく、果たして橙流が赤蜘蛛をどうやってここまで運んできたかは、謎である。
むしろ謎のままにしておきたい。


数分で橙流は戻ってきた。その両手には何やら皿を持っている様子。
その皿を赤蜘蛛の前に並べて、豊満な胸に挟んでいたスプーンを取り出した。


「野菜スープと、ミルクに浸したパンよ。」


これくらいなら食べてるでしょ?と橙流はあーんと異形の口元へとスプーンを運ぶ。
だがしかし赤蜘蛛はその口を開こうとはしない。


「やっぱりこういうのは食べないのかしら?」


モンスターがリヴリーを食すことは知っている。
だが、中にはリヴリーと共存し、同じ生活をしているモンスターがいることも知っている。
果たして自分とは異なる姿形をしたこの赤蜘蛛が、どちらに当て嵌まるのか…
どちらにせよ、今は弱って思うように動けないことは確かだ。
橙流が恐れもせずこの大きなモンスターの前に、それも骨をも噛み砕くその口の前に堂々と座っているのは、
直感的にこの赤蜘蛛は後者側のモンスターだと感じたからだろう。
…とはいえ、いざとなったら黙って襲われて喰われるような女でもないわけだが。


「美味しいわよー。毒なんて入ってないから安心なさい。」


持ってきたスープを自分でもぐもぐと食べ始める。
すると、突然"ピキ…!"という何か鋭い亀裂が走るような音が鳴り響いた。
それにも特に慌てる様子はなく、スプーンを咥えながら何の音かしら?と暢気なものだ。
その音は、目の前の赤蜘蛛から。じっと様子を見ていると、徐々に赤蜘蛛の身体が変形していくのが分かる。


「あらあらあら…」


何かある度に"あら"というのは彼女の口癖だろう。
あらあら言っている間に、目の前に赤髪褐色肌の青年が姿を現す。
四つん這いの姿勢であったが、変身が終えると赤蜘蛛の青年は息を大きく一吐きしてむくりと身体を起こし胡坐をかいた。
細身だが大柄な方だろう。細長く三つ編みされた後ろ髪が風に揺れる。


「私、変身するところなんて生まれて初めて見たわ。」


実のところ、橙流は見た目こそ20代の女性だが実年齢は不詳だ。
一度魂になり彷徨っていたものの、いつの頃から存在していたのかはわからない。
その長い人生の中で、リヴリーにせよモンスターにせよ自分たちと同じ姿に変身するのを見ることは初めてのことだった。
その逆も然り。
元よりヒト型で生まれる種、愛くるしい姿のまま生まれる種、本能のままに繁殖を繰り返す種…
この世界には何かと不思議な事柄が多い。
ちなみに橙流はリオンだが、獣姿へと変身することはできない。


「………治療…感謝する………」


赤蜘蛛の青年が、ぼそぼそと声を発した。
それに対してもまた橙流が"あら"と嬉しそうに言った。


「なぁんだ話せるんじゃない!まったく言葉が通じないかと思ったわ。」
「……驚かせて…すまなかった。」
「別に驚いてなんてないわよ。珍しいなぁとは思ったけどね。」
「…お前、変わった女………」
「えぇそうね、よく言われるわ。」


どことなくぎこちない喋り方の赤蜘蛛の青年に、ふふっと笑みを零す橙流。
話せることがわかった橙流は、とても嬉しそうだ。


「ねぇ、千切れた足はどこに行ったの?てっきり片腕か片足がないものだと思った。」


そして、赤蜘蛛の青年の身体を見て思った疑問を率直に訊ねる。
ヒト型になった赤蜘蛛にはきちんと四肢が揃っている。


「…背中。」
「ン?」
「背中から、生える…」


8本あるうちの4本は手と足に、残りの4本は背中から生えてくると云う。
その足は出し入れ可能で今は身体の中にしまわれている。
千切れた足は左後ろ足の下から2番目。もしもこれが一番上か下かであれば片足なり片腕なりなかっただろうということだ。


「面白い構造してるのね。それにしても、ちゃんとヒト型で手足が揃ってて良かったわ。」
「…いずれ、再生する…」
「あら、そうなの?」


中4本は折れたり千切れたらそのままだが、外側4本は再生して元に戻ると言う。
なんて便利な身体なのか。


「…うっ…、頭が、くらくらする……」
「あぁそうだったわ。あなたまだ全快じゃないのよね…歩けるかしら?」


橙流の言葉に赤蜘蛛の青年はふらつきながらも立ち上がる。
肩を貸し、その身体を支えながら今度は家の中へ。
そしてそのままベッドへと寝かせると、赤蜘蛛の青年はまた眠るように意識を手放した。


「怪我した足は身体の中ということは…包帯も身体の中に?」


すやすや眠る赤蜘蛛の青年の顔を眺めながら、橙流の好奇心ゆえの疑問は尽きない。
何を食べるのか聞き忘れたわ、寝てる最中に突然変身したりはしないのかしら、まだ名前も聞いてなかった…云々。
次眼が覚めた時は、質問攻めにされるのを覚悟しておいた方が良いかも知れない。

今はゆっくり、お休みなさい。
そう云って、橙流はそっと部屋の明かりを消して出て行った…



:end:

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コメント 2

十子

も・・・もえぇぇぇぇっっ!!(><)

は!つ、つい叫んでしまいました!
こ、こういうのは本当にツボです!!あああ、橙流ちゃんたら、本当にいい女なんだから!!
やっぱり赤蜘蛛さんをかついで運んだんでしょうか・・・ひ、ひとりで?(^^;)
それはそれでかっこよくて惚れ直しますwww
by 十子 (2013-06-09 12:54) 

時空

◆十子さん。
ツンツンツンツンツン(σ*´ω`)σ (ツボ押し中) ←!?
うわあぁぁ ありがとうございますー!
恐らく普通に「さてと…(よいしょ)」ってガッツリ担いだ系ではと想像しております…!(爆)
もしかしたら「/big」したのかも…?と思ったけどさすがにそれは怖いので却下案(笑)
うふふ(ノ∪`*)
そしてこちらでアレですが十子さん宅の擬リヴっこちゃんたちも
十子さんのご様子も密やかに柱の影から見守っておりますー![柱]ω0*)チラッ。
ありがとうございましたー☆
by 時空 (2013-06-10 08:14) 

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