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七夕の前日のお話。 [*擬人化小説*]

七夕はもう明日なんですね。
以前の原型添いの設定で擬人化のお話はちょいちょい書いてたけど、
新しい設定の方でもまたちょこちょこ書いていけたらいいなぁなんて思ってます。
うちの子達の雰囲気とか関係性とか、そんなんがなんとなく伝わればいいなー。
橙夢メインに書きたいと思いつつ、弌吏と仄月メインに。
自分の中でも仄月というキャラを安定させたい(原型添い世界の方では死んじゃってるので)。
描写表現苦手なので読み苦しいところもあるかと思いますが自己満足的な趣味の域なので
生温く通り過ぎてやってください(*_ _)
 
  
 
 
 【 幸せを願う 】 
 
七夕。
星に願いをする、そんな日。
 
 
普段用事がない限りあまり外に出ない弌吏を誘い、
仄月は診療所の前に立てた笹の葉の飾り付けを手伝わせていた。
七夕まであと1日というそんなギリギリの時に。

「弌吏ー、七夕の話って知ってるか?」
「…知らん。」

飾り付けをしながら、他愛ない会話。
弌吏からの返事はいつも素っ気ない。

「相っ変わらず何にも興味がないんだなぁ、駄目だぞ~それじゃあ。」
「…これはどこに飾る。」
「人の話は聞けよ~。」
「適当に飾るからな。」
「シカトされるとパパ傷付く。」
「………誰がパパだ、気持ち悪い。」
「ぐっさりくるねぇ…」

語尾緩く喋るのは仄月の特徴だ。
弌吏の言葉にわざとらしく胸元を押さえ弱って見せるが、
そんな仄月を余所に弌吏はふと空を見上げた。

「…こんな曇り空では、天の川は渡れないな。」
「んぁ…あぁでも、天の川は雲の上だからなぁ。…って、七夕の話知ってるんじゃないか。」
「雨が降って増水して、流される。」
「何でお前さんはそう後ろ向きなの。」
「…っ。」

捻くれたことを言う弌吏の頭をわしゃわしゃと撫で回す。一瞬ビックリしてピンと立つクロメ特有の猫耳さらわしゃわしゃ。
温かくて大きな手が、そんなこと言うんじゃないよと優しく諭しているかのように。
その手をうるさいと言わんばかりに払い、弌吏は仄月から二歩遠ざかりタコのような飾りを笹に括りつける。
触れられたことが気になるのか、猫耳をピッピッと不快そうに動かしながら。

「何その切ない距離。」
「あらー大先生、七夕飾り?いいわねぇ。」
「んぉ。」

近所のおばさん。
仄月は愛想も良く顔も広い。
小さな診療所でものんびりと困ることなくやっていけるのは、地域の人々との信頼関係があるおかげだ。
また、兼自宅になっているためご近所付き合いも厚い。
弌吏は、そんなところが苦手だった。
だから家を出た…わけではないが、もう10年ほど一人暮らしをしている。
近所のおばさんと世間話を始めた仄月からより遠ざかるように、少し陰に移動して身を隠した。
照れ屋なわけではなく、人目につくのが苦手なのだ。

「ハルちゃんは元気?跡は継がないの?」
「いやぁ~、最近全然会ってなくてねぇ。」
「まぁ…忙しいのねぇ。」
「んなぁことより、折角だから短冊書いてってな。」

"ハルちゃん"とは、仄月の息子の遥弐のこと。
親子で医者をしているが、おっとりのんびりとやっている仄月と違い、
遥弐は他所で日々ピリピリと忙しくしているようだ。
診療所の前に笹を立てたのは、近所の人や診療に来てくれた人に自由に短冊を書いていってもらうように。
すでにちらほらと願い事の書かれた短冊がひらひら風に揺れている。
そこに新たに近所のおばさんの願い事も付け足され、徐々に賑やかになってきた。
さて、近所のおばさんが去った後。弌吏の姿がない。

「あれ…何処行ったあいつ。」

仄月にとって弌吏は養子だが、遥弐同様大切な息子であることには変わりない。
若干構い過ぎてうざがられることもしばしば…
それでもめげずに息子たちに構う仄月は、けっこうな寂しがり屋なのかもしれない。

「弌吏ー、弌吏ぃー。………お。」

昼休みのため誰もいない診療所。
とりあえず中を探すと、本来仄月が仕事をしているデスクに向かって左手にペンを持ち何かを考えている様子の弌吏がいた。

「どうした?」

ひょいと手元を覗き込むと、そこには一枚の短冊が。
一応願い事を書いてみようとしていたようだ。

「…何を書いていいのか、わからん。」
「なーんでもいいんだよ。ささやかなことでも、ありえないようなことでも。」
「仄月さんは、何を願うんだ。」
「俺か?そうだなー…」

弌吏は養父である仄月のことを名前で呼ぶ。まだ一度も父と呼んだことはない。
彼のことを受け入れていないわけではないが、どこか家族になり切れない気持ちがあるのだ。
さて、弌吏の問いに仄月は考えた。
デスクに寄りかかるように腰を据え、顎に生え揃った髭を片手で撫でながら。
そうして数十秒の後、答えを出す。

「まぁー…なんだな、できればこの傷を綺麗に消してやりたいなぁ。」
「………。」

弌吏の右半身に残る痛々しい傷跡。
10年以上も前の事故による怪我の所為だが、深く鋭くその身を抉り傷が残った。
身体は服で隠せるが顔は隠しようがないため、どうしても他者の眼につく。
緩く曲げた指の背で、弌吏の額と頬の傷を優しく擦りながら、せめてここだけでもなぁと呟く。

「でもこればっかりは星に願っても、な。」
「…別に、気にしていない。」

傷を擦る手を叩きそっぽを向いてしまう。
まったく気にしていない、といえば嘘になる。
不慮の事故で残った傷とは云え、やはり人の目は気になる。
だが、それは仄月の気にするところではない、と弌吏は思っていた。
叩かれた手をわざとらしく痛い痛いと擦る仄月を横目に、ペンを置き短冊をくしゃりと丸めて立ち上がる。

「あーあー。」
「うるさい。帰る。」

ちょうど午後の診察も始まろうかという時間。
引き止めようとする仄月を置いて、弌吏はさっさと診療所を出た。
飾られた笹の葉には先程よりも短冊が増えているように見え、小さく息を漏らす。

「…願い事、か。」

ぽつりと呟いて、とぼとぼと帰っていった。

いつか弌吏にも、素直に願い事を口にできる日がくればいい。
休診日の前、間もなく昼休みの終える診療所は普段より少しばかり混むだろう。
一時の静けさの診察室の中、一人寂しくインスタントのコーヒーを淹れて弌吏のくしゃくしゃにした短冊を丁寧に伸ばす仄月は、きっと誰よりも弌吏の幸せを願っている。
 
 
今年もたくさんの願いが、星へ届きますように。
 
 
【 end 】
 
 
 * / * / *
 
弌吏が少し姿を消すと心細くなる親父(50↑)。
一年に一回しか会えないとかになったら寂しくて死んじゃうと思う。爆
弌吏は仄月と遥弐に対しては素っ気なく冷たい感じですが、
橙夢や陸桜と話す時はわりと穏やかで優しいお兄さんです。
橙夢達のことをなでなでしてあげるお兄さんです。
またその辺の、仄月が「なんでだよ…!orz」と凹むくらいの対応の違いを
書いていけたらいいなと。
身近な人にほど素直になれない、とかそんなんです。
一人称は出て来なかったですが、弌吏の一人称は「私」です。
基本的に一人称は以前の設定から持ち越し…俺にしても良かったけど。
あんまり俺俺言うキャラが多くなると誰が誰だかわからなくなる(私が←)
ところで仄月の診療所には看護師さんはいないのかね。普通いるよね。
きっとどこかにいるよ。モブ看護師。爆
看護師求m… 冗談ですよ。そんなに頭の中で把握できない(ポンコツ)
 
橙夢サイドの七夕のお話まで間に合わない…
多分橙夢サイドは、白鴉の呉服店に立派な笹があるんだと思います。
白鴉の家が代々持ってる山とか、そういうところに自前の笹があったり。
白鴉自らは動かないけど、橙夢と陸桜が勝手に色々いじってそうです。笑

あんまり七夕関係ないというか七夕をネタにする必要もなかったお話ですが、
折角なので季節イベントに便乗です。
何もないのも寂しいので、数年前に描いた七夕橙夢をそっと置いていこう…
ひこぼしとーむ。
数年前のまだ男の子だった橙夢。
何を思ってスケスケにしたのかわからない。
ではでは… [ヒキコモリ]‐`)ノシ

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